退去ナビ
📖 ガイドライン解説

退去費用でクロス(壁紙)の張替を全額請求された|6年住んだら負担はゼロ?

/運営者:株式会社FACXIA

退去の立会いが終わり、届いた請求書を見て「クロスの張替が全額請求されている」と驚いた方は少なくありません。数年住んだ部屋の壁紙を、なぜ全額負担しなければならないのか——。

この記事では、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」の考え方をもとに、クロス(壁紙)の張替費用がどのように計算されるのかを整理します。

先に結論:クロスには「耐用年数6年」の考え方がある

ガイドラインでは、クロス(壁紙)の耐用年数を6年とし、入居年数が長くなるほど賃借人の負担割合は小さくなる(残存価値が1円に近づく)という考え方が示されています。

つまり、6年住んだ部屋のクロスを「新品の張替費用まるごと」請求されている場合、その金額が妥当かどうかを確認する余地があります。

ただし、「6年住んだから必ず0円」と言い切れるわけではありません。理由は後述します。

入居年数ごとの負担割合の目安

入居年数賃借人の負担割合の目安
1年約83%
2年約67%
3年50%
4年約33%
5年約17%
6年以上ほぼ0%(残存価値1円)

※この割合は、賃借人の故意・過失等により張替が必要になった場合の負担割合の目安です。そもそも通常損耗・経年変化が原因であれば、原則として貸主負担となります。

「0円」と言い切れない3つの理由

理由1:そもそも貸主負担のケースかもしれない

日照による変色、家具の設置跡、テレビや冷蔵庫の後ろの黒ずみ(電気ヤケ)などは、通常の使用による損耗・経年変化として、原則は貸主の負担とされています。この場合は年数計算に入る前に、そもそも賃借人が負担するものではない可能性があります。

理由2:故意・過失があった場合、工事費用の一部を負担することがある

ガイドラインでは、耐用年数を経過した設備等であっても、賃借人は善良な管理者としての注意を払って使用する義務を負うとされています。そのため、故意・過失による毀損があった場合、修繕工事に伴う費用(人件費等)については賃借人の負担となることがあります。

「6年経ったから1円しか払わない」と単純に整理できるとは限らない、という点は押さえておく必要があります。

理由3:契約書に特約がある場合

通常損耗を賃借人の負担とする特約は、一定の要件(特約の必要性と合理的理由があること、賃借人がその義務を認識していること、賃借人が義務負担の意思表示をしていること)を満たす場合に有効と判断され得ます。

一方で、賃借人の利益を一方的に害する内容の場合は、消費者契約法10条により無効となる可能性もあります。まずは契約書に該当する記載があるかを確認することが出発点になります。

負担する「範囲」も確認する価値があります

ガイドラインでは、クロスの負担単位について、㎡単位が望ましいとしたうえで、毀損箇所を含む一面分までは賃借人の負担としてもやむを得ない、という考え方が示されています。

つまり、一箇所の傷を理由に「部屋全体」「全室」のクロス張替を請求されている場合は、その範囲が妥当かどうかを確認する余地があります。

貸主負担になりやすい例

  • 日照など自然現象によるクロスの変色
  • 家具の設置による床・壁のへこみ、設置跡
  • テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
  • 壁の画鋲・ピンの穴(下地ボードの張替えが不要な程度のもの)
  • ポスターや絵画を貼っていた跡

借主負担になりやすい例

  • タバコのヤニ・臭いによる変色
  • 重量物をかけるためのくぎ穴・ネジ穴(下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
  • 結露を放置したことで拡大したカビ・シミ
  • 落書き等、故意による毀損
  • ペットによるキズ・臭い

請求書が届いたら確認したい4つのポイント

  1. 損耗の原因が記載されているか — 通常の使用によるものか、故意・過失によるものかで判断が変わります
  2. 入居年数が反映されているか — 耐用年数の考え方が計算に含まれているか
  3. 施工範囲は妥当か — 一面分か、部屋全体か、全室か
  4. 契約書に特約があるか — 原状回復やクロスに関する特約の有無と、その内容

まとめ

「6年住んだからクロスは1円」という整理は、耐用年数の考え方としては方向性が合っています。ただし実際の負担額は、損耗の原因・契約書の特約・施工範囲によって変わります。

請求書を受け取ったら、金額そのものより先に「その項目がなぜ請求されているのか」「どの範囲が対象か」を確認することが、納得のいく精算につながります。

よくある質問

Q. 6年住んだら、クロスの張替費用は払わなくてよいのですか?

A. 耐用年数6年を経過すると、経過年数を考慮した負担割合はほぼ0%(残存価値1円)に近づきます。ただし、故意・過失による毀損があった場合は修繕工事に伴う費用(人件費等)を負担することがあり、また契約書の特約によって扱いが異なる場合があります。

Q. タバコのヤニによる変色は借主の負担になりますか?

A. 喫煙によるヤニや臭いは、通常の使用を超えるものとして賃借人の負担とされることが一般的です。ただし、程度や契約内容により判断が異なる場合があります。

Q. 一箇所の傷で部屋全体のクロス張替を請求されました。

A. ガイドラインでは、クロスの負担単位は㎡単位が望ましいとしつつ、毀損箇所を含む一面分までは賃借人の負担としてもやむを得ない、とされています。部屋全体や全室分の請求については、範囲が妥当かどうかを確認する価値があります。

クロスの請求、妥当かチェック

見積書の内容を入力するだけで、参考適正額との差を診断します(参考値)

退去ナビで無料診断する

本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」の考え方をもとにした一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。実際の負担額は、賃貸借契約の内容・現地の状況により異なります。個別の判断については専門家にご相談ください。